
連載:リーパーすみこ先生先生に聞く、アメリカの教育事情
音と視覚に訴えるアメリカの幼稚園教育

- リーパーすみこ先生プロフィール
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アイオワ州立大学大学院ジャーナリズム学部修士課程卒業。アルバカーキー市の公立小学校で図書館司書として20年勤務。現在も、読み聞かせ活動を行なっている。
著書:『ライブラリアン奮闘記』(径書房)、『えほんで楽しむ英語の世界』(一声社)『アメリカの小学校ではこうやって英語を教えている』『アメリカの小学校では絵本で英語を教えている』(径書房)『アメリカの小学校に学ぶ英語の書き方』(コスモピア)『アメリカの幼稚園ではこうやって英語を教えている』(径書房)『年齢なんて単なる数字よ!』(Amazonペーパーバック)。
私は、リタラシイ・プログラムと言われる読書推進プログラムの一員として、アルバカーキーの学校で働いていました。図書館司書は、教員免許を持った教員です。良い本を集め、読み聞かせを通じて、生徒達に読書の楽しさを指導していくのが、私の仕事の主な目的でした。
私が働いていた学校は、メキシコから移民してきたヒスパニック系の生徒達が多かったので、教室における指導法なども視覚に訴えるテクニックを使うことが多かったと思います。
17年程前に、リタイヤーした後はアメリカの教師達がどのようにライミングのリズムを読み書きに導入しているか、そして、小学校では、どのようにリーディングを指導しているのか、さらに小学校における文章の書き方の指導法などについてのアメリカ教育事情の著書を数冊書かせていただきました。退職後も教員達のワークショップと呼ばれる勉強会に、時々出席させて頂いたものです。
退職後の私の活動としては、主に幼稚園のクラスの読み聞かせを担当してきました。アメリカの小学校は、幼稚園から始まります。幼稚園は小学校の校舎の1部にあります。コロナ禍の後は、しばらく学校を訪れなかったのですが、最近、再び学校を訪れようと学校に連絡したら、全ボランティアのバックグラウンド調査が必要になったとのこと。「えっ、私は、そこで働いていたじゃない」と言いたかったのですが、銃弾事故を含め、学校における事故があまりにも多くなってきています。それなりに納得。ということで、現在、アルバカーキー公立校の人事課は、どこかの会社に依頼して、私のバックグラウンドを調査中です。この調査のために、私は65ドル支払わねばなりません。たとえ元教員の私でも例外ではありません。私のバックグラウンドの調査が終わるまで、しばらく学校に出入りできないという次第です。
今回は、私がボランティアとして、働いていた、学校に自由に出入りしていた3年ほど前の報告です。仲良くしていた、幼稚園の先生がどのように教えていたかをレポートさせていただきます。コロナ禍の後も同じスタイルで教えているとのことです。
まず、大切なことを教える時には、先生は、生徒達をスクリーンなどの前に座らせていました。目の前に座らせれば、生徒達の注意力も違うという考えに夜ものです。また、リタラシイ・タイムと呼ばれる、読み書きに関する授業は、頭の冴えている朝一番に行われます。
ある日のリーディングの時間をご紹介します。この日の勉強は「e」の音についてです。生徒達は、スクリーンの前に引いてある絨毯の上に座ります。eの音は”elbow”のe。肘の写真を見ながら「エッ、エッ、エッ」と皆で発音します。それから、先生は空中に手をあげて「e」と書いてごらんと言い、生徒達は数回、空中に手をあげて「e」と書きます。

母音なしで、単語は成り立ちません。C(子音)+V(母音)+C(子音)で出来ている発音を学びます
母音のリストも、もちろん教室に貼ってあります。
基本的な英単語は子音(consonant)+母音(vowel)+子音(consonant)の3文字の単語から成り立っています。
cat dog bed put sun ban tan run
上のどの単語をみても子音(C)+母音(V)+子音です。いくら、子音が大切だと口を酸っぱくして言っても、母音無くして単語は成り立ちません。
音をバラバラにしてc/a/t, d/o/g, b/e/dなどのように、(子音)+v(母音)+c(子音)を習ったあとは、c(子音)+vc(母音と子音がブレンド)の形式を強調します。最後の大きな紙(写真参考)に書いた母音と子音の組み合わせのリストを使います。
•am という子音+母音グループなら
ham( c+va) jam(c+vc) dam(c+vc)
ハム ジャム ダム
などがあることを紹介します。
•(ig)のグループならigの前にpをつけるとpig。p+ig=pig。 wならw+ig=wigとなります。
下の写真catは、「k」の音だということを学んでいます。「クッ、クッ、クッ」と喉から音を出す「k」の練習をしてからcatは、c/atと練習します。

「ig」,「ing」「ick」「at」「am」「an」グループの写真です。

•atのグループを見てみましょう。
「at」グループに前にはどんな子音を持って行きましょうか。「c」ならc+at、catとなりますね。それでは、cの代わりにmを持って来てみましょう、mの後に、「at」をつけると、mat(マット、ござ)になります。こんな風にゲームにように新しい単語を組み立てていきます。
cat
mat
•「ig 」グループの前に「p」をつけてみましょう。p+igはpigになります⇒pig
「w」を前に持ってくると、w+igになります)⇒wig
•「ing」グループなら
「at」グループに前にはどんな子音を持って行きましょうか。「c」ならc+at、catとなりますね。それでは、cの代わりにmを持って来てみましょう、mの後に、「at」をつけると、mat(マット、ござ)になります。こんな風にゲームにように新しい単語を組み立てていきます。
(r+ingはringになります)⇒ring
(w+ingでwingになります)⇒wing
•ick グループなら
(w+ickはwickになります) ⇒wick(wickはろうそくの芯のことです)
(b+rickは brickになります) ⇒brick(brickは積み木、レンガのことです)
•amグループ
(C+amは女の子の名前) ⇒Cam
(r+am)⇒ ram (ramは雄牛)
•anグループなら
(p+an)⇒pan (鍋)
(c+an)⇒(缶)が出来上がります。
こうして、後ろの音が同じ音で終わるファミリー(グループ)の前の音を変えながら、新しい単語が出来上がることを発見していきます。
前の音を変えて単語を覚える方法は、視覚に訴え、かつ、引いたり足したりするドリル的な遊びの要素が入った教え方です。アメリカ的なゲームの要素が入っていると思うのですが、いかがでしょうか。
