
連載:リーパーすみこ先生に聞く、アメリカの教育事情
必ず盛り上がる英語絵本

- リーパーすみこ先生プロフィール
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アイオワ州立大学大学院ジャーナリズム学部修士課程卒業。アルバカーキー市の公立小学校で図書館司書として20年勤務。現在も、読み聞かせ活動を行なっている。
著書:『ライブラリアン奮闘記』(径書房)、『えほんで楽しむ英語の世界』(一声社)『アメリカの小学校ではこうやって英語を教えている』『アメリカの小学校では絵本で英語を教えている』(径書房)『アメリカの小学校に学ぶ英語の書き方』(コスモピア)『アメリカの幼稚園ではこうやって英語を教えている』(径書房)『年齢なんて単なる数字よ!』(Amazonペーパーバック)。
1. No, David! by David Shannon
by David Shannon

1999年、カルデコット賞の次点に選ばれた作品です。各ページは、”No, David!” とお母さんのお叱りを受けているデイビッドのいたずらを楽しむことができます。デイビッドは大変ないたずら坊主です。食事中に口を大きく開けて食べ物をみせる、鼻くそをほじくる、素っ裸で外に飛び出していく、ページごとに、お母さんから” No, David!”と叱られています。
この本は、作者のDavid Shannon(デイビッド シャノン)が5歳の時に、書いたお絵かきの本に基づいているとのこと。大変ないたずら坊主のようだったようです。
この本を、学校で読み聞かせると必ず受けます。また、いたずら坊主にもかかわらず、お母さんの愛を感じさせる本です。見開きに出てくるデイビッドのお母さんの服装、そして、デイビッドの家の家具などを見ていると、1960, 1970年代のアメリカの良き時代の中産階級の家庭を彷彿させます。例えば、食べ物を口にいれて、大口を開けているページを観察すると、ブロッコリ、人参、鶏肉など、栄養価の高い食事であること、それに家具やデビッドが壊してしまった花瓶などを観察しても裕福な家庭であることがわかります。怒っていても、デイビッドをこよなく愛するお母さんの愛情も伝わってきます。だからこそ、デイビッドもあんなに伸び伸びとした悪戯坊主に育ったのでしょう。
子ども達にとっては、そのいたずらが笑いを誘い、この絵本を食い入る様に見つめる生徒達です。
2. Ketchup on Your Cornflakes?
by Nick Sharratt

この本は、ページが上ページと下ページに分かれている、仕掛け絵本です。私の読み聞かせの会に ひい孫さんと参加してくださった88歳のおじいちゃんが、「僕はケチャップの本が一番面白かったな」と言ってくださいました。
上半分にはDo you like custardなどの質問文が羅列されています。Do you likeの練習にいいですね。
ページの下に書かれているのは、on your apple pieなどです。色々な組み合わせがとても楽しい英語の練習になります。
全ページは上のページと下のページに分かれています。
このように、上の部分には
Do you like(~が好きですか?)
下の部分にはon (~の上)やin~(~の中の)
などのフレーズが書かれています。
例えば、Do you like custard?と上のページにあります。そこで、on your headと組み合わせたりします。その組み合わせが奇抜なので、子供達は笑いながら、英語を学べます。
上のページのフレーズと下のフレーズを組み合わせるとおかしな組み合わせができるので、楽しみながら英語を学ぶ格好の絵本です。Do you like custard /on your head? になったりするのですから。
Nick Sharratt(ニック シャッラット)はイギリス人で1962年生まれの62歳。私の図書室には彼の”Oh No! Shark in the Snow!”もありました。ちょっとひねった面白さが彼の特徴とも言えます。
私が横浜の有隣堂という書店で読み聞かせをした時に、真っ先に売れてしまった本です。読み聞かせにはとても人気のある本。かつ、すぐ、Do you like _______?とon (in) __________の文章作りで遊べます。
3.Very Hungry Caterpillar
by Eric Carle

幼稚園あるいは1年生によく読む本なのですが、結構色々なtricky(厄介な)な単語が出てきます。例えばdiagraph (ch,sh, th ck, ph, gh, whなどの2重音字)は、今のうちに覚えて置けば、将来得をします。
(diagraph2重音字)としては:cherry, chocolate, stomach ache
(eeが中に入っている単語例) cheese, feel, green, week
(ooが入っている単語例) cocoon, food, look, moon
Wednesdayもtricky word(一筋縄ではいかない)ですね。そのほか、throughやbuildは読めるかな? 1週間の曜日を覚えさせ、アオムシ君が蝶になるまでに、どんなものを食べたか、その単語にも挑戦。ネタになる勉強材料がたくさんある絵本です。
•1週間の曜日の読み方
•(ee)や(oo)が続く単語
•cocoon 青虫が蝶を包む殻から出てきて、蝶に成長する過程
•sausage, stomach ache, buildなどの単語、読めるかな?
また、エリック カールが80歳の時にリード・アロウド(読み聞かせ)をしたYouTube ビデオがあります。タイトルは、Eric Carle reads The Very Hungry Caterpillar。彼は91歳で亡くなりました。彼が亡くなった時、私は、校長に、「あの偉大な絵本作家であるEric Carleが亡くなりました。Eric Carleを偲んで彼の絵本を読みましょうね」と朝礼の時にアナウンスしてもらいました。
そして、子ども達にエリック カールは、author(作者)であり、illustrator(絵を描く人)でもあることも教えます。author, illustratorという単語を覚える良いチャンスです。エリック カールは、6歳の時にドイツから移民してきたアメリカ人であること、しかもこの本は66の言語に翻訳されているなども、子ども達にとって楽しい豆知識になるのではないでしょうか。
4.James Marshall's Mother Goose

最後に簡単にライミングに触れさせていただきます。ライミングは、英語のリズムに慣れるのには、最適です。ライミングの作者は特になく、縄跳びや手遊びを通じて子ども達に親しまれてきた伝承の童歌です。
ライミングは、脚韻を踏む、簡単に言えばダジャレだと思っていただければ良いと思います。
ここではJames Marshall (ジェイムス マーシャル)の楽しいイラストがふんだんに取り入れられたマザーグースをご紹介します。
ひとつ例にとると、
Peter, Peter, pumpkin eater,
Had a wife and couldn’t keep her;
He put her in a pumpkin shell
And there he kept her very well.
(Peter, eater, her),と(shell, well)などがライム(脚韻)を踏んでいます。
マザーグースは、イギリスで発祥し、それからアメリカに渡り、どんどん広がっていきました。私が働いていた学校の幼稚園の先生達はライミングに絶大な力を入れていました。私が読み聞かせをするとある先生は「今のお話にライミングが出てきたわね。なんだったかしら?」と生徒に聞いていました。私が読み聞かせをしていると「あっライミングだ」と声を張り上げる生徒もいたものです。
私が働いていた学校は、メキシコからの移民の生徒達が多くいました。そこで、英語のリズムに耳を慣れさせる「フォネミック アウエアネス」という理論を取り入れたのです。特に、低学年の生徒達には耳を鍛えるために、マザーグースに出てくるわらべ歌などをふんだんに聞かせました。日本でも役に立つ理論だと思います。いかがでしょうか。

(子音と、ライミングのお遊びから英語を学びます)