mpi 英語教育フォーラム レポート

「2021 mpi 英語教育フォーラム 教育は未来を築く子ども達のために -世界とつながる子ども達の力 4ジャンル・4スキル-」レポート

イベント開催:株式会社mpi松香フォニックス
レポート作成:コスモピア編集部
投稿日:2021.12.22

2021年10月24日、株式会社mpi松香フォニックスによる「2021 mpi 英語教育フォーラム 教育は未来を築く子ども達のために -世界とつながる子ども達の力 4ジャンル・4スキル-」が開催されました。このフォーラムは、東進ハイスクール英語講師の安河内哲也先生を招いた第一部と、4つのワークショップを開催した第二部に分かれ、編集部は第二部に参加。本フォーラムの第二部では、小学生の保護者や、小学生、中学生以下のお子さんを教える先生に向けて、英語習得に必須な4つのジャンルと4つのスキルについて、田縁眞弓先生、佐藤久美子先生、Suzy Nachtsheim先生、中村麻里先生のワークショップが行われました。
総勢400名以上の参加があった盛況なワークショップの概要をお伝えいたします。

『読み書きにつなげるフォニックス 〜学校外でできるあれこれ〜』
 田縁眞弓先生(京都光華女子大学こども教育学部 教授)

小学校英語における文字指導「小学校英語における 読むこと・書くこと」

新学習指導要領には「書く活動」や「読む活動」では段階的な指導法や、その出口が用意されている一方で、「音と文字」の指導では最も子どもたちの理解度がばらつく傾向にあるといいます。この指導をどのようにすればよいのかをテーマに、田縁先生はまず、「KEET METHOD(小学校英語教育学会)」「Balanced Approach」などの指導法を紹介しました。
フォニックスの指導法は1つではなく、小学校現場では1文字1音のジングルを活用し、たくさんの音声インプットをしながら文字と音の関係に気づかせることが大切と語り、さらには児童英語教室の場合は生徒たちから求められているものを理解し、目的に合ったものを提供することが大切と伝えられました。
先生はこのようなフォニックス指導を通して、小・中・高と役立つ「文字が読めてそれが音声化できる」力がつくのは素晴らしいことだと語っておられます。

学校外でできること

ご自身が執筆されたWE CAN!フォニックスシリーズ(mpi刊)の教材の特長を紹介しながら、学校外での指導で気をつけるべき点として、以下の点を挙げられました。

  • 単なる書写活動にするのではなく、言語活動として意味ある文字指導に
  • じっくり時間をかけて(宿題・保護者の助けも借りて)
  • 低学年から短時間で繰り返し
  • 様々な方法で
  • あらゆるところにセーフネットを(文字形と音の認識)
  • 無理に教え込もうとしない
  • 「音」から先に
  • 児童は教えたことを学ぶわけではない→自らの気づきを積み上げてゆく
  • 自己評価を取り入れ、児童に「できる感」を与え、目標設定を

『幼児の言語獲得と歌の効果的な導入について』
 佐藤久美子先生(玉川大学大学院 名誉教授)

『幼児の言語獲得と歌の効果的な導入について』

佐藤先生は、幼児の言語獲得と歌の効果的な導入のポイントについて実際にmpi教材のSuperstar Songsの曲を使いながら具体的に話されています。

歌の役割
歌の学習効果は主に3つあるといいます。
  • 1.先行知識を創造し、活性化する
  • 幼児期に英語の歌を聞いたことがあれば、あらためて英語を学ぶ際に、英単語を理解し興味を持って学ぶことができます。先行知識としての歌は、幼いときから歌っていると、文法知識・お話の内容・単語といった点で、後に気づきを生みます。そのため、子どもはまず歌を歌ってどんどんインプットしていくことが望ましいといえます。
  • 2.複数の感覚を持った学習である
  • 多くの感覚を使うほど学習のレベルは深く、広くなるので、聴覚・視覚・運動感覚・触覚などを積極的に学習に応用することを勧めます。聴覚・視覚・運動感覚などのさまざまな感覚を使うほど、記憶のリテンションは高まります。そうすると、記憶の中から感覚を呼び起こすことができ、子どもが文法など難しい事項を学習する際もヒントになりうるのです。
  • 3.注意を向けて、記憶を助ける
  • 歌は情報を記憶させ、思い出させる機能を果たすので、子どもの英語学習のきっかけを与えてくれます。

GIGAスクール構想で、子どもの学習のためにタブレットを使うことが普通になり、先生が教えるときも、タブレットを使って(歌の)インプット、アウトプットすることがより効果的になってきていると先生は言います。

上記のような歌の学習効果を踏まえて、先生は歌とジェスチャーについて、日常生活で使うフレーズを使う場面を想像しながらインプットしていくということを勧めています。まず、体を使いながら、ジェスチャーを通じて子どもに英語をインプットしたあとで、それを日常生活の表現で使えるように応用していくと、英語が話せる、使えるというところにつながっていくからです。

また、mpi松香フォニックスの「Superstar Songsシリーズ」にはたくさん歌があるので、子どもの発達段階によって適切な歌を選択できると述べておられました。
さらに先生は、長年にわたる音源による英単語発音獲得についての研究から、例えば歌、チャンツ、絵本について、何を使えば最も発音の獲得が良いかという研究成果を紹介されました。
歌、チャンツ、朗読、何も聞かないグループにおいて、発音の獲得度合いを比較した結果、語彙力が低い子に対しては、朗読が効果が高く、語彙力が高い子に対しては、チャンツ、歌が効果的だったという研究結果が出たそうです。

歌というものは発音を良くする効果があるだけではなく、日常生活における表現学習に繋げるための第一段階にあるので、歌で体を動かしながら、インプットしてアウトプットに繋げ、その結果生じる様々な効果を使ってもらいたいとのことでした。

『Using Rubrics to Assess Writing』
 Suzy Nachtsheim先生(Instructor at Vancouver Island University)

ライティングを評価するためにRubricsを使う

生徒がテストで意見を書いたとき、どのように評価するかが問題となるというのがこのワークショップの主題でした。
言語のスキルというものを考える際に、リスニング、リーディングは、英語ではreceptive skillsと言われます。
receptive skillsの評価は、選択肢から短い答えを選ぶ形式のテストで行うため、評価が簡単になります。しかし、ライティングとスピーキングといったproductive skillsについての評価は、一貫性を失うことが多いと先生は語っておられます。
評価の一貫性を維持するために、できるかぎり評価基準を統一することが必要となります。これは先生の経験からも言えることだそうです。先生は7、8年前にIELTSの試験官を務め始められました。バンクーバーアイランド大学は今は新型コロナウィルスのせいでそれほど多くの生徒はいないが、世界中から500人ほどの生徒が集まります。彼らを相手に、4、50人の先生が受け持つという状況で、評価基準を維持しながらカリキュラムを提供し、かつ認識も共有するのは非常に難しいことだったといいます。非常に評価基準が厳しい先生がいる一方で、非常に甘い先生がいるようでは、生徒のために公平ではないからです。
レベル付けされたテストを開発する過程や、IELTS試験官の研修で、先生は教科書などについての評価に関して学ばれました。以下がその過程で学習したことです。

良いテストの特性

研究の結果、5つのごく基本的な基準を見つけられました。

  • 実用性(現実的に被験者を管理できる)
  • 長期的に、一定期間に、現実的なコストで運営できるかといったこと。
  • 信憑性(状況に適している)
  • 国ごとの文化など各状況に適して自然であること。
  • 有効性(被験者に対して測定したいと望むことを測定している)
  • 測定したいことと関係ないことで被験者に試験を与えず、測定したいことだけを測定すること。
  • 確実性(異なる環境下でも一貫して測定できる)
  • 年度や、生徒のタイプや、評価者によらず、いつも信頼できるテストで、質が担保されているということ。
  • 波及性(教育することと学習することに影響を及ぼす)
  • 先生が教えたこと、また生徒が学んだことに対するフィードバックが得られるということ。

生徒のライティングなどの成績を明晰かつ公正に評価することを助けるツール Rubric


先生によると、productive skillsは、明晰かつ公正に評価するのが難しく、 productive skills を、おしなべて、マークテストで測定することも可能ではあるが、分析的に行うことも可能だということです。Rubricは、全体を部分に分けて、分析的に評価するのに役立つツールだと先生は述べています。Rubricは、全体を部分に分けて、分析的に評価することを助けるツールで、チャート、グラフのようなもので、それぞれが独自のRubricをつくることができるともおっしゃっていました。

Rubricのサンプル



上記以外にも評価基準には様々なものがあるが、自身のRubricはCONTENT(被験者が何を言っているか)、DELIVERY(被験者がどのように言っているか)という基準でつくられているとのことでした。
その後、開発に携わったTAGAKI Advanced 1 Three Reasons(mpi刊)のライティングの提出物を使いRubiricを活用した評価の仕方を提示されました。

『絵本で伸ばす子どもの自主性とクリエイティビティ』
中村麻里先生(MELEP主宰 金沢大学 非常勤講師)


絵本を使ってどのように言葉とクリエイティビティを引き出すか、がテーマのワークショップでした。

厳選された絵本がもたらす学習効果

中村先生は、厳選された絵本がもたらす学習効果は以下のようにまとめられると述べました。

  • 楽しくはっきりとしたコンテクストを提供する
  • →学びへの感情的なかかわりを高める
  • イラストが理解を助け、意味深いインタラクションを与える
  • →「意味理解」を中心にすえた授業を行う
  • リズムの良いことばの繰り返しを含む
  • →意味深い文法学習につなげる

絵本は子どもの学びへの感情的なかかわりを高めることができ、感情的な関わりが高いと学びも高まると、先生は述べています。
また、mpiから出ている絵本はリズムのよいことばの繰り返しを含むことが多いので、ジェスチャーや歌をともなった読み聞かせなどで、子どもにとって意味深い文法理解を身につけさせることができるとのことでした。

自主性やクリエイティビティを育むポイント

続いて、子どもが自主性やクリエイティビティを育むために大事なのは、以下の点だと先生は語ります。

  • 語彙と文法(vocabulary and grammar)
  • 子どもたちの素地として語彙と文法があり、両者を教え込んでから使い始めるのではなく、教えることと使うことを同時に進めていくことが大切になります。

  • 受容言語と表出言語(receptive & productive skills)
  • 子どもたちは受容言語と表出言語の両方を持つことが重要で、受容言語は聞いたり読んだりすることでわかることばで、表出言語は自分たちで書いたり読んだりできることばのことです。

  • 自己効力感(self-efficacy)
  • 自己効力感とは、自己肯定感より一歩踏み込んだ表現で、「あるタスクを自分ができる」という感覚のことです。このような感覚を英語の教室の中で少しずつ積み重ねていくと、自己肯定感も高まっていきます。

  • 適切な足場架け(scaffolding)
  • 教える側として何を大事にすればよいのかというと、そのひとつは適切な足場架けです。子どもたちを観察しながら、そのときどきでその子どもに応じたアドバイスをしたり、アクティビティのレベルを変えるといった対応をするということが重要になります。

  • 選択の機会(choice)
  • そして、選択の機会に関しては、子どもが自分で選ぶ機会をたくさん持つレッスンを組み立てていくことが大切です。

  • 家庭との連携(collaboration with the custodians)
  • その後、実際に英語絵本 Benji(mpi刊)を使ってどのように自主性とクリエイティビティを育み方について話しました。キーワードは「すこしずつ責任を手放し子どもたちに任せる(Gradual release of responsibity)」。

先生は子どもは基本的な読み聞かせ、音読、CDを聞く、絵本に関連した歌を歌うなどの活動を経て言葉を身につけてゆくとし、それらの活動と並行して行うと効果的なアクティビティ: Find the Page, Picture Hunt, Say the Word, Divide the Card into Two Groupsなどを紹介。これらの活動を通して自主性とクリエイティビティをどのように育むのかを前述の6つのポイントを通して分析してみせられました。
Find the Pageは、先生が絵本のページに関してヒントを出し、子どもがページを探すことを通して、主に文法、受容言語、自己効力感を育むアクティビティでした。
Picture Huntは、絵本のページを見て思い浮かんだ単語を言うという課題を、オンライン掲示板で先生とやりとりすることを通して、家庭との連携を図りながら、学びへの感情的なかかわりを高めるアクティビティでした。
Say the Wordは、絵本に出てくるキーワードやキーセンテンスを真似をすることを通して、語彙と文法や、自己効力感を育むアクティビティでした。
Divide the Card into Two Groupsは、単語が書かれたカードを2つのグループにわけることを通して、クリエイティビティを育むアクティビティでした。

終わりに

登壇された先生方からは、フォニックス、歌、評価基準、絵本といった4つのジャンルについて、実践例を交えた貴重なお話を聞くことができました。
また、小学生の保護者や小学生以下のお子さんを教える先生にとって、mpi松香フォニックスの教材や、先生方の考えを通して学ぶことは、非常に有益であると気づかされたフォーラムでした。