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連載:宮下いづみ先生に聞く英語の始め方【第1回】

英語を日常の一部にする環境作りと
フォニックス

宮下いづみ先生プロフィール
Eunice English Tutorial主宰、武蔵野大学、明治大学、実践女子大学非常勤講師。幼児から社会人まで幅広い年齢層に英語を教えて40年ほどになる。著書『音のある英語絵本ガイド』(共著:コスモピア)、『ドラえもん はじめての英語辞典』(共著:小学館)『ドラえもんはじめての英会話辞典』『ドラえもんはじめての英語図鑑』(いずれも単著:小学館)など。日本経済新聞に『おもてなし会話術』を連載中。

小学生のお子さんが英語を始めて、トータルな英語の力をつけるには、どういうふうにから始めるのがよいでしょうか?

 小学1年生のお子さんを考えると、すでに英語で歌をうたったり踊ったりなどという活動をしているお子さんもいれば、はじめて英語に触れるお子さんもいたりと、いろいろなお子さんがいらっしゃると思います。
 一番大事なのは「英語のお勉強が始まる」という気分で接するのではなく、日常の一部として自然に英語が始められるような環境や雰囲気作りです。そのためには英語の勉強をノルマのように課すというのではなく、時間があればいつでもどこでも英語に触れていられるような環境や雰囲気作りが必要だと思います。
 ここまでできたら始められるとか、こういうふうにしなければならないというようなmustではなくて、できるところから始めていいんです。「読んで」「見て」「聞いて」「言って」などの要素を入れて、できるだけ複合的に始められるのがよいと思います。

先生にご監修していただいた「子ども英語ブッククラブ」の本の読み放題「eステKids」のおすすめパックは、フォニックスからスタートしていますが、幼い子どもたちが英語を学び始めるときにフォニックスから始めるのは、なぜでしょうか。どういう効果がありますか?

 これは日本語と英語の文字と音の関係の違いがあると思います。フォニックスとは英語のアルファベットと音のルールがわかるもので、英語は日本語のように一つの文字対して一つの音が対応しているわけではないのです。たとえば日本語の「う」はどなたが読んでも「う」としか読めません。英語の場合には、bagだったらbは「ブッ」、aは「ア」、gは「グッ」とそれぞれの音がつながってbagという音になります。日本語の「ア」にあたる英語の音は何種類もあるので、それは音声をよく聞いて覚えていくとよいと思います。
 日本語とは異なる、英語における音と文字とのつながりがわかったほうが、ひとりで読むのに慣れて抵抗がなくなり自然に読めるようになるのが早いです。
 学校生活でも日常生活でもすべて英語、とつねに英語に囲まれ実際に使っているような環境の方ですと、あえて「フォニックス」などと言わなくても、なんとなくわかっていくことが多いのですが、そうではない場合、やはりルールに則ったものから始めたほうが日本人のお子さんにはわかりやすい場合が多いということで、そこからスタートするようになっております。

フォニックスは最初はとても簡単なルールからスタートしますのでわかりやすく感じるのですが、だんだんルールが複雑になってくるように感じますが、そのあたりはどのように考えればよいでしょうか。

それはそうかもしれませんね。最低限abcdefg...(アブクドエフグ・・・)の26文字がわかればラクなようです。ここまでできたから次に進む、というように規則的に進まなくても大丈夫です。もともと英語を歌から入っている方とか、マジック e (語末のeがつくと、その前の母音であるa,e,i,o,uはアルファベット読みになる)などを知らなくてもI likeと言えるとか、いろんな方がいらっしゃいます。ですから、ルールについては、ここまで来たから次の段階に行ける、と考えなくてといいと思います。
 たとえば、Building Blocks Library(ビルディング・ブロックス・ライブラリー)はレベル3まではフォニックスルールに沿ったシリーズで、Level 0やLevel 1に、sun(太陽)とかnut(ナッツ)があります。大人は「子音+母音+子音」のように思うかもしれませんが、子どもはそのような概念をさほど気にしません。それでよいのです。はじめの段階では聞いているうちになんとなくabcdがわかるのを目指すことで十分効果的なのです。

Building Blocks Library 
レベル0『Hot, Hot, Hot』
sunが最初のページに出てきます。

Building Blocks Library 
レベル1『Nat Likes Nuts』

abcdefg...が身についてくると次の段階へつながります。フォニックスにも「マジックe」(前述)のほかにも母音(a,e,i,o,u)が二つ続いた時のルールなどいろいろあり、慣れてきたらなすぐに法則がわかる方となかなかなじめない方がいらっしゃいます。もし、なじめない場合には、likeを見てlikeなんだな、ということがわかればいいかなと思います。
 完璧にスペルを見て音がわかって意味もわかるというのは難しいと思うんですね。最初の段階では、文字は飾りのようにあり、sunと言われて絵があるから、これがsunか、というように理解していきます。絵がなくとも聞いて意味がわかるには慣れと経験が必要です。
ルールについては1回でわからなくとも、何度も繰り返し聞いていくうちに読み方がつかめていくでしょう。

保護者もフォニックスをわかっていなくても大丈夫ですか?

 楽しくお子さんとやっていただいているうちに、ご本人もわかるようになるので、心配なさらないでください。あんまり気負いすぎずにお子さんといっしょに実際に音をよく聞いて文字を見ていっていただき、英語の楽しさを伝えていただきたいと思います。