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連載:宮下いづみ先生に聞く英語の始め方【第5回(最終回)】

英語の多読は、子どもの将来にどう役立つか

宮下いづみ先生プロフィール
Eunice English Tutorial主宰、武蔵野大学、明治大学、実践女子大学非常勤講師。幼児から社会人まで幅広い年齢層に英語を教えて40年ほどになる。著書『音のある英語絵本ガイド』(共著:コスモピア)、『ドラえもん はじめての英語辞典』(共著:小学館)『ドラえもんはじめての英会話辞典』『ドラえもんはじめての英語図鑑』(いずれも単著:小学館)など。日本経済新聞に『おもてなし会話術』を連載中。

英語の多読をすることで、どのような力が養われると思いますか。

よく英語学習の意味として「学校のテストや受験に役立つ」「資格試験に有利」と言われますが、私はそれだけでなく、「生きていく上での選択肢が増える」ことに意義があると考えています。

もちろん学校のテストや資格取得は、子どもにとって短期のモチベーションアップにはなりえます。しかし、それらはあくまで手段であって、本当に大切なことは「英語で何をするか」です。英語を学ぶことによって、人生の選択肢が増えていくことが、英語学習の大きな意義だと考えています。

もう1点言えるのは、子どもの自信につながるということです。

世の中には、「英語はちょっと…」とネガティブな気持ちを抱いている人もいます。しかし逆に、ある程度の英語の本が読みこなせた子どもは、「さらに別の本も読んでみたい」「もっと難しい文章も読んでみよう」とポジティブでやる気になっていることが多いですね。

このように、多読をしてきたという事実は子どもの自信を育んでいきます。そうした自信を持っている人は、周りから見ても説得力のある人間に映るのではないでしょうか。

とは言っても、英語の多読がなかなか続かない子どもさんもいそうですね。何か続けるためのコツはありますか。

「この前より読めるようになってる!」という成長実感があると、多読も続きやすいようです。「ちょっと読めない部分もあるけど、何度か読めば理解できる」というのが、難しすぎず易しすぎず、適切なレベルの本だと考えられます。



また、ご家庭での声かけも重要です。子ども一人で多読の習慣をつけるのはなかなか難しいですから、英語の多読を続けられるよう、継続して声をかけてあげましょう。

声かけは、子どものやる気をそがないようなかけ方を試みるとよいでしょう。たとえば「本読まないの?」といった命令寄りの声かけになってしまうと、子どものモチベーションをそいでしまいます。

よい声かけの例としては、「今日は何を読むの?」「昨日は何を読んだ?」「日曜日から、何冊読めたかな?」「どのページが楽しかった?」などのように聞いてみるとよいでしょう。

また本の内容について聞いてみるのも、良い声かけになります。「その本、どうだった?」「お母さんも読みたいから、おもしろい本があったら教えてほしいな」というように、子どもの読んでいる本に関心を示してあげると、子どものモチベーションにもつながるのではないでしょうか。

いろいろな生徒さんを見る中で、どのようなお子さんが伸びやすいと感じますか。

なかなかひと言では言えませんが……あえて言うなら「スケールの大きさ」でしょうか。

英語の力というと、目先のテストや受験・資格試験と結びつけて考えられることが多いですよね。しかし英語力が伸びやすいご家庭では、より大きなスケールで、子ども本人の能力を養うようにしているケースが多いように感じます。

たとえば自宅でニュース番組を観ているときに、家族で感想を言い合ったり、年齢の高い子だと家族でディベートをしたりして、子どもの考える力を養っているご家庭がいらっしゃいます。そういうケースですと、英語を勉強している感じではなく、自然に接していることが伝わってきます。

極端な例では、「学校の成績は気にしない」くらいスケールの大きな考え方をするご家庭もいらっしゃいました。やはり目先の点数にこだわらず、長い将来を見据えていらっしゃるからこそ、むしろ英語力も伸びやすいのではないかと思います。



ちなみに昨今の情勢を受けて、私の教室でも今年からオンライン授業を導入しています。オンライン授業は、子どもたちだけでなく、私たち講師にも新しい意識改革が求められます。これが意外と悪くないと感じていて、どの生徒も同じ距離に存在しているようにも感じられます。たとえば「海外の人をオンライン授業に招いて、子どもたちと話してもらう」といった授業も可能になりました。

その一環でインド人の方に授業をしてもらったことがあるのですが、当初私は、インドなまりの英語でも授業として受け入れられるかなと気がかりでした。しかし授業後、ある親御さんから「インドの方はインテリジェンスが高いですよね。多様な文化に触れられてよいと思います」と、むしろ好印象のご感想をいただきました。これもまたスケールの大きな捉え方の一例です。

オンラインならではの授業はいろいろできそうですね。

子どもたちにも結構評判がいいですよ。海外のゲスト講師を手軽に招待できるのもそうですし、ヨガの先生を招いて、オンラインヨガ教室を実施しました。ヨガの先生が子どもたちにヨガを指導するそばで、私が英語をしゃべっている、という(笑)。

オンラインと対面授業は性質が異なります。オンラインのルールを提供する側も子供たちを守れば、新しいタイプの刺激になると感じています。そのためには、目標を明確にしながら、互いを理解していることの確認を事前にするのも重要です。

「自分で考えて行動し、それを伝えることが英語でできるようになれたら」と、その思いで授業を進めています。多読や本を読むことは、著作権の問題もありオンラインで行うには、eステのようなシステムを利用しないとむずかしい。そこでeステが大活躍します。個々に自宅で読んでもらい、それに対して講師がフィードバックするというだけでなく、ともにがんばっていることをシェアするのは、モチベーションアップにつながりますね。

発表の場として、オンライン上に読んだ絵本を音読してもらい、ビデオ撮影したものをアップしてもらいました。子どもたちや保護者には、ミニ発表会として互いの発表を観ていただきコメントもつけてもらいました。練習量は個人差がありましたが、それはできる範囲でみんな違ってよいという思いで行った課題でした。上級生は自分で撮影し、自分でサイトにアップできたようで、ITリテラシーの高さに驚きました。

保護者からも「楽しく取り組めた、英語をきれいに読めるようになった」という声をいただきました。やはりオンラインであっても人前に出るというのは、よい訓練になったようです。しかし「ビデオで登場するのはためらわれる」という生徒は観るだけでよいことにするなど配慮して、全員が無理のない形で参加できました。

デジタルつながりでお話しすると、子ども英語ブッククラブは、英語の多読のみならず、デジタル端末での操作に自然と慣れていけるという利点もあります。こうしたデジタルリテラシーが育まれやすいということも、やはり「生きていく上での選択肢が増える」ことにつながっていくのではないでしょうか。

子どもたちみんなが同じペースで同じことを同じように進めていく必要はないのです。それぞれの時間、思いに合わせて、一番よい形で英語に触れていけるということを、eステは可能にしてくれます。これから楽しく、たくさん、できるだけ毎日読んで英語にふれていただけたらと期待しています。

英語学習を通じて、子どもたちの生きる力が育まれるということですね。貴重なお話をいただき、ありがとうございました。